まーくん

まーくんは永遠に現実を生きるお地蔵さんです。

まーくんは目覚めることがありません。

ずっと仮想の現実を真実として生きます。

目覚めることもないまま、真理を生きて、そして死んでいきます。

学ぶこともなければ気づくこともありません。

ただ一心にこの世を生き、苦楽を味わい、そしてあの世に戻っていく。

その純度の高さが、彼がお地蔵さんであることを証拠づけています。

まーくんの傍にいる、まーくん地蔵を身ごもる菩薩観音の彼女。

彼女のまーくんに向けている眼差しは、野花を慈しむ眼差しと全く同じです。

彼女が「おはよう」と声をかけても、まーくんは彼女の目をじっと見るだけで何も答えません。

その時まーくんは何も考えていませんが、次の瞬間、自分が梨を食べたかったことを思い出し、黙って彼女に梨を差し出します。

彼女は微笑んで梨を受け取り、微笑みながら梨を剥きはじめます。

その頃にはまーくんは、机に向かって夢中になってパソコンをいじっています。

「梨どうぞ」と彼女が声をかけても、まーくんは「はん」と気の抜けたような返事をするだけで、パソコンに夢中のままです。

彼女はまーくんから少しだけ離れて座り、彼の横で大好きな薔薇園を読みます。

しばらくすると、まーくんは突然に嬉嬉と、昨日作ったラムネの話をし出します。

彼女はラムネの話に興味がありませんが、まーくんの嬉嬉とした様子があまりにカワイイものだから、ニコニコしながらまーくんの話を聞いています。

まーくんは彼女の菩薩の微笑みを受けて自信がみなぎり、さらにエネルギーを高めてラムネの話を続けます。

彼女はとても退屈なのに、とても幸せです。