いおりくん

いおりくんは落ち着いて座っていることができない子です。

先生が手を焼くものだから、いおりくんの席は何年生になっても教壇の目の前です。

いおりくんはとても活発で、隙さえあれば、プラスチックの小さな野球バットを持って、お外に遊びに行ってしまいます。

いおりくんは、お友達や動物にとても優しい子です。鳥は親友です。

ある日、いおりくんは遠くにお散歩に行き過ぎて、帰り道が分からなくなってしまいました。

辺りは薄暗くなり、いおりくんは不安になりはじめました。

どっちにいったら帰れるのか、すっかり分からなくなってしまいました。

空はもう紺青色。「いよいよまずいぞ」そう思って、ふと空を見上げたら、木の電信柱の上に、くちばしが4,50㎝もある大きな真っ黒の鳥が止まっていました。

その鳥は、右側を向いてじっと止まっていました。

いおりくんは、すぐに「あぁ、右に行けばいいんだ」と分かりました。

そして安堵感と共に、右に進んでいったら、見覚えのある道に出て、無事に帰ることができました。

いおりくんは「もう一度あの時の鳥に会いたいな」と思ってから、人間の時ではすでに何十年かが過ぎています。

それでも、いおりくんとあの鳥は、一時も離れていることはありません。

いおりくんはそれを知っているから、本気であの鳥を探そうとはしないのでした。