そこにいるこ

むかしむかし、

なにもしなくていい場所がありました。

そこには、

すべりだいもなく、

おもちゃもなく、

なにかをしなさい、という人もいませんでした。

その場所に、ちいさな子どもがいました。

その子は、することがありませんでした。

したいことも、ありませんでした。

できることも、ありませんでした。

子は、ただ、そこにいました。

ある日、子は思いました。

「ここにいるのは、なんのためかな」

でも、

いすも、つちも、そらも、

なにもこたえませんでした。

だから子は、

こたえをさがすのをやめました。

つまらない、とも言いませんでした。

だめだ、とも言いませんでした。

ただ、

あさがきて、

ひるになって、

よるになりました。

なにもおこりませんでした。

なにもかわりませんでした。

でも、子は、ちゃんと、

そこにいました。

つぎのひも、そのつぎのひも、子は、そこにいました。

なにもしないまま、

でも、いなくならずに、

ちゃんと、そこにいました。

それだけでした。

それで、おはなしは、つづいていきます。